Nature誌の研究、AIが個人の研究者キャリアを加速させるも、科学全体としては視野を狭めると指摘
AIツールが個々の科学者の成功を加速させる一方で、新たな知識発見の全体的な範囲が懸念されるほど縮小していることが、大規模な調査で判明した。
世界的なジャーナル Natureに掲載された重要な研究は、人工知能 (AI) が科学界に与える二面的な影響を明らかにした。AIは個々の研究者のキャリア成功を加速させる強力なツールとなる一方で、科学研究全体の方向性を狭め、多様性を減少させていると指摘している。
シカゴ大学の社会学者James Evans率いる研究チームは、Googleの言語モデルを用いてAIを利用した研究を特定するため、自然科学6分野(生物学、医学、化学、物理学、材料科学、地質学)における310,957本以上の論文を分析した。その結果、AIを使用する研究者は使用しない研究者と比較して、論文発表数が3.02倍、引用数 (citation) が4.85倍多いことが判明した。さらに、彼らは同僚よりも平均で1.37年早く研究チームのリーダーに昇進していることも分かった。
しかし、科学界全体を俯瞰すると、負の影響が確認された。AIの導入は、研究されるテーマの数を4.63%減少させ、研究者間の交流を22%も低下させた。論文の著者らは、「AIツールは、新しい分野を探求するというよりも、既存の分野を自動化しているように見える」と結論付けており、「個々の科学者の影響力を拡大する一方で、科学全体の到達範囲を縮小させる」という矛盾した結果を生んでいる。
James Evansはこの現象を「個人のインセンティブと科学全体の利益との間に生じる対立 (You have this conflict between individual incentives and science as a whole)」と要約した。興味深いことに、このパターンはmachine learning、deep learningの初期から現在のgenerative AI時代に至るまで一貫して見られるものであり、AI時代に科学界が直面する構造的課題を浮き彫りにしている。
AIは効率を加速させるツールである一方、その影響は科学的発見が既存のテーマに集中し、新たな知識の探求を要する長期的な大規模発見を遅らせるリスクを示唆している。