研究者らが人格クローンAIの「アイデンティティ」を定義する新枠組みを提案、意識を問わず外部から測定
arXivに掲載された研究が、人物を模倣するAIがどれほど「本物らしい」かを外部観察で測定する手法を提案。意識という大問題に踏み込まずに済むアプローチ
実在の人物の人格を模倣するAI(パーソナリティ・クローン)が人々の生活に近づくにつれ、浮上する問いがある。そのAIが本当にその人物「である」とは、どうやって知ることができるのか。arXivに発表された新しい研究「Identity from the Outside: A Conceptual Framework and Research Program for AI Personality Clones」は、この問いに異なるアプローチで答える。すなわち、表に現れる行動の観察を通じてアイデンティティを「外部から」測定するという課題設定で、意識(consciousness)という哲学問題を方程式から完全に除外するものだ。
著者らは、人々が使う「アイデンティティ」という言葉には3つの意味が混在していると指摘。本研究ではこれを3つの明確な基準に分けた。元の人物への忠実性(fidelity)、一般的な人間らしさ(human-likeness)、そして唯一無二の個人性(individuality)である。あるAIは各基準で合格したりしなかったりする可能性がある。
研究の核心は、「観察可能なアイデンティティ」を6つの要素に分解することだ。基盤構造(substrate)、気質(dispositions)、記憶(memory)、自己更新の動態(update dynamics)、文脈(context)、外的な偶発事象(exogenous contingencies)で構成される。さらに観察者の視点からの「識別不可能性」(indiscernibility)を測る式を立て、各要素の影響をランダム化アブレーション(randomized ablation)実験で評価することを提案している。
本研究の重要な提案は、長期的なアイデンティティの測定には、録音テープの再生のようにAIに過去とまったく同じ応答経路をなぞらせるのではなく、「climate fidelity」、つまりAIが様々な仕方で応答する確率の一致度を用いるべきだという点だ。さらに著者らは、AIが自分のバージョンを変更可能(versionability)であると認識した場合(あるいはそう認識するよう設計された場合)、長期的なアイデンティティの信頼性が低下する傾向があるとも予測している。
ただし、これは概念枠組み(conceptual framework)と将来の研究プログラムであり、実証的な実験結果ではない点を強調しておく必要がある。また、査読(peer review)を経ていないarXivのプレプリントであるため、通常どおり注意して読むべきだろう。
著名人のチャットボットや故人のデジタルツインなど、実在の人物を模倣するAIが生活に入り込む中、明確な測定基準があれば、どのAIが信頼に値し、どれが人間「らしい」だけで本物ではないのかを社会が判断できるようになる。